呑川関連レポート

呑川レポート02 ― 呑川の“水質浄化本格対策” ―
   呑川「合流改善工事」、いよいよ始まる!(2020年3月)     

 呑川の浄化対策については今までも大田区や東京都を中心に様々行われて来ましたが、残念ながら細かな改善工事が主で、対処療法的対策がほとんどでした。
 しかしながら、長年待ちに待った本格的改善対策と考えられる大規模な工事が、いよいよ始ま ります。 呑川沿岸の住民にとっては大いに注目すべき案件です。

図-1雨天時下水貯留管施行予定図-東調布公園を起点としてトンネル貯留水槽工事

<中流域の汚染の原因>
 呑川の周辺の下水道の方式は「合流式」と言って、降雨時は雨水を下水管に流して処理する方式になっています。
 そのため降雨時は雨の流入により大幅に下水が増水するために、下水を森ケ崎水処理センターまで本管を経由して運ぶには本管の太さには限界があるため、全てを運べないのです。よってその場合は近くの河川に溢れさせる様に造られています。

図-2 汚物の腐敗とスカムの浮遊模式図

 このことにより、降雨時(だいたい5、6mm/h程度以上の)には汚物を多く含んだ下水と雨水が呑川に溢れ出し、この汚物が世田谷区、目黒区含を含む上流域から流れに乗って下流へ流れ下り、池上より下流の中流域で地形や潮の関係で川床に溜まり、そこで腐敗が進み、悪臭や発生ガスに持ち上げられた汚泥がスカムとなって浮き上がり川面を覆う現象等が起きています。

<工事の目的と概要> 従来、大田区や東京都ではこの悪臭等の反応を抑えるべく、屋形船(スカム発生抑制装置)を浮かべて川床に向けて酸素を吹き込んだり、現在建設中の高濃 度酸素水装置でも同様に川床に向けて酸素を送り、腐敗反応を変えて改善を 試みること等を行っています。  でも、これらはあくまでも対処療法であり、本来は下水からの汚物の流入自体を止めることが根本解決になると思われます。その工事が全体の一部とはいえ、いよいよ始まったと言うことです。

図-3 雨天時の下水を貯留管へ回収

 今回始まるのは呑川に流れ込む世田谷区、目黒区、大田区の下水区域のうち、大田区の下水のみが対象ですが、それでも完成すれば全体の約1/3超の下水の流れ込みを概ね防ぐことが可能になる工事です。方法は図-1の様に大田区の東調布公園を起点とした直径3mから2.4mのトンネルを道路下に延長距離で約6km超にわたり造り、雨天時はそこに雨交じりの下水を貯めて従来は川に溢れさせていた初期下水の汚物を回収防止する装置になります。  本格的な雨の多くは従来通り川に流すことになりますが、雨の降り始めの汚物を多く含む下水を回収して一旦貯め、雨が止んだら、下水道本管経由「森ケ崎水再生センター」へ送り、処理後、海へ捨てるフローとなります。下水道局によれば、概ね7割(降雨回数で)の雨天時下水の流入を防止できるとのことで、大いに期待すべき対策が始まると考えてよいでしょう。ただ、問題はこの工事が終了するのに概ね10年以上かかるとのことです。また、さらに完成しても全体必要部分の約1/3超のみである点は大いに留意すべきことであり、今後も大田区や東京都下水道局にさらなる尽力を願わなければならない次第です。以上 (文責:H・K)